【荻上チキ】ファクトチェックは本当に効くのか?「バックファイア効果」と民意の複雑さ
「フェイクニュースを正せば、人は正しい判断をするはず」
そう思っていませんか?
今回の動画では、チキラボ所長・荻上チキ氏が、選挙とメディアリテラシーについて、科学的データに基づいた衝撃的な分析を披露しています。
ファクトチェックは参政党支持者にも届いている。でも、効果は限定的。なぜなら「ファクトは正しいが、信念は変えない」という現象が起きているからです。
この記事を読めば、選挙報道の見方、SNSの情報の受け取り方が、確実に変わります。
メディア接触の実態:テレビとYouTubeが主役
まず、荻上氏が示したのは、選挙期間中の有権者のメディア接触の実態です。
テレビとYouTubeが二大情報源
調査結果によれば:
- テレビとYouTubeが有権者の主要な情報源
- 選挙が近づくにつれて、接触頻度が増加
- 新聞やラジオは相対的に影響力が低下
つまり、現代の選挙では、テレビの報道番組とYouTubeの政治系チャンネルが、有権者の投票判断に大きな影響を与えているのです。
参政党、日本保守党、令和新選組の特徴
特に興味深いのは、参政党、日本保守党、令和新選組の支持者が、マスメディアに対して極めて否定的な「感情温度」を示すという調査結果です。
「これらの政党の支持者は、マスメディアを信頼していない。代わりに、YouTubeやSNSを主要な情報源としている」
この傾向は、ファクトチェックの効果を考える上で、非常に重要な意味を持ちます。
ファクトチェックの効果と限界
ここからが、最も重要な部分です。荻上氏は、ファクトチェックの効果と限界について、データに基づいた分析を行っています。
ファクトチェックは届いている、でも…
まず前提として:
- ファクトチェックの情報は、参政党支持者にも届いている
- つまり、「情報が届いていない」わけではない
しかし、効果は限定的です。なぜか?
「バックファイア効果」とは?
ファクトチェックに対する反応として、よくあるパターンは:
1. 「ファクトチェックの内容が間違っている」
「そのファクトチェック自体が間違っている。私が信じている情報源の方が正しい」
つまり、ファクトチェックそのものを否定するという反応です。
2. 「ファクトは正しいが、自分の信念は変えない」
「確かにその事実は認めるけど、だからといって私の考えは変わらない」
これが非常に重要なポイントです。事実を認めても、信念や投票行動は変わらないという現象が起きているのです。
「信念の残存現象」
荻上氏が指摘する最も重要な概念が、「信念の残存現象」です。
「流言訂正後も、認知は修正されても感情や投票行動は変わらないことが多い」
つまり:
- 認知レベル: 「この情報は間違っていたんだな」と理解する
- 感情レベル: でも、その政党や政治家への感情は変わらない
- 行動レベル: 結果として、投票行動も変わらない
ファクトチェックは、認知は変えられても、感情や行動は変えられないのです。
なぜファクトチェックだけでは不十分なのか?
この現象の背景には、投票行動の本質があります。
投票は「信念」に基づいて行われる
荻上氏の指摘:
「有権者の投票行動は単一の情報ではなく、保守・中道・リベラルといった政治的信念に基づいて形成されており、簡単には揺らがない」
つまり、有権者は:
- 個別の政策や事実だけで投票を決めているわけではない
- 政治的信念(保守かリベラルか、など)に基づいて投票している
- その信念は、長年の経験や価値観に基づいているため、簡単には変わらない
「情報」ではなく「物語」で人は動く
さらに重要なのは、人は「情報」ではなく「物語」で動くということです。
例えば:
- 「参政党の〇〇という主張は間違っている」という指摘(情報)
- vs
- 「参政党は既存の政治に挑戦している」という物語(ナラティブ)
多くの人は、後者の「物語」に惹かれて投票します。個別の事実の正誤よりも、その政党が描く「物語」に共感するかどうかが重要なのです。
パネル調査の重要性
荻上氏が強調するもう一つの重要なポイントが、パネル調査の重要性です。
パネル調査とは?
パネル調査: 同一有権者の選挙期間中の意識変化を追跡する調査
従来の世論調査は、異なる人に対して複数回調査を行うため、個人の変化を追うことができません。
しかしパネル調査では:
- 同じ人に対して、複数回調査を行う
- 個人の意識がどう変化したかを追跡できる
- より深い民意の理解が可能になる
なぜパネル調査が重要なのか?
荻上氏の指摘:
「民意の解釈は政治家に独占させるのではなく、データに基づいた多様で複雑な理解が必要」
選挙結果が出ると、政治家は「これが民意だ」と主張します。しかし、実際の民意はもっと複雑です。
パネル調査によって:
- どのような有権者が、どのような理由で投票先を変えたのか
- どのような情報が、どの程度影響を与えたのか
- ファクトチェックの効果は実際にどうだったのか
こうした詳細な分析が可能になります。
メディアリテラシー教育の必要性
荻上氏の分析から見えてくるのは、メディアリテラシー教育の重要性です。
ファクトチェックだけでは不十分
ファクトチェックは重要ですが、それだけでは不十分です。なぜなら:
- 認知は変えられても、行動は変えられない
- 「物語」に惹かれる人は、「情報」では動かない
- 政治的信念は簡単には変わらない
必要なのは「批判的思考力」
では、何が必要なのか?
荻上氏が提案するのは、批判的思考力を育てる教育です。
つまり:
- 単に「正しい情報」を教えるのではなく
- 「情報をどう見極めるか」という思考力を育てる
- 「なぜ自分はこの情報を信じたいのか」と自問できる力
こうした能力があって初めて、ファクトチェックが本当の意味で機能するのです。
「感情温度」という指標
荻上氏が使用した「感情温度」という指標も非常に興味深いものです。
感情温度とは?
各政党や政治家に対して、有権者がどの程度好意的か(あるいは否定的か)を数値化したもの。
参政党、日本保守党、令和新選組の特徴
調査結果によれば、これらの政党の支持者は:
- マスメディアに対して極めて低い感情温度
- つまり、強い不信感を持っている
この感情が前提としてある限り、マスメディアによるファクトチェックは効果が限定的になります。なぜなら、「そもそもマスメディアを信じていない」からです。
ではどうすればいいのか?
この問題に対する明確な解決策はまだありません。しかし、いくつかのヒントは:
- 信頼できる情報源の多様化
- マスメディアだけでなく、様々な立場からのファクトチェック
- コミュニティ内での対話
- 同じコミュニティ内の信頼できる人からの情報提供
- 長期的なメディアリテラシー教育
- 一朝一夕には変わらないが、教育の重要性は変わらない
選挙報道の質を高めるために
荻上氏の提言は、選挙報道の質を高めることにもつながります。
単なる「当落予想」を超えて
従来の選挙報道は、「誰が当選するか」という当落予想が中心でした。しかし、それだけでは不十分です。
必要なのは:
- 政策の詳細な比較
- ファクトチェックの実施
- 有権者の意識変化の追跡(パネル調査)
- 投票行動の分析(なぜその候補に投票したのか)
「民意」の複雑さを伝える
選挙結果が出ると、メディアは「これが民意だ」と単純化しがちです。しかし実際の民意は:
- 複雑で
- 多様で
- 矛盾も含んでいる
こうした複雑さを伝えることが、メディアの重要な役割なのです。
まとめ:ファクトチェックと民意の複雑さ
荻上チキ氏の分析から得られる重要な教訓は:
- ファクトチェックは届いている、でも行動は変わらない
- 認知と行動は別
- 投票は「信念」に基づいて行われる
- 個別の情報だけでは動かない
- 「物語」が「情報」より強い
- 人は物語に惹かれる
- メディアリテラシー教育が不可欠
- 批判的思考力を育てる
- 民意は複雑
- 単純化せず、多様性を理解する
- パネル調査の重要性
- 個人の変化を追跡することで、より深い理解が可能
ファクトチェックは完璧な解決策ではありません。しかし、だからといって無意味ではありません。
重要なのは、ファクトチェックの限界を理解した上で、メディアリテラシー教育や、民意の複雑さの理解と組み合わせることです。
2025年衆議院選挙を前に、私たち有権者一人ひとりが、情報をどう受け取り、どう判断するか。それが問われています。
動画情報
タイトル: チキラボ – 選挙とメディアリテラシー
動画URL: https://youtu.be/ONC6G3od8ss
出演者: 荻上チキ(チキラボ所長)
テーマ: ファクトチェックの効果と限界、メディア接触の実態、パネル調査の重要性
この動画は、選挙報道の見方、SNSの情報の受け取り方を根本から見直したい全ての人におすすめです。科学的データに基づいた分析が、あなたのメディアリテラシーを確実に向上させます。

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