【2026年2月版】OrcaSlicer v2.3.1新機能とKlipper最新動向|Input Shaping・ファジースキン・インフィル改善を徹底解説
はじめに
3Dプリンティングの世界では、スライサーソフトウェアとファームウェアの進化が印刷品質を大きく左右します。2026年1月にリリースされたOrcaSlicer v2.3.1は、インフィル、表面制御、モーションチューニング、ワークフロー全般にわたる包括的なアップデートとなり、Klipper・Marlinユーザーの双方に大きなメリットをもたらしています。
本記事では、OrcaSlicer v2.3.1の主要な新機能を中心に、Klipperファームウェアとの統合改善、Input Shaping(入力整形)キャリブレーションの実践方法、そして2026年の3Dプリンティング技術トレンドについて詳しく解説します。
OrcaSlicer v2.3.1:2026年最初の大型アップデート
OrcaSlicer公式GitHubでリリースされたv2.3.1は、alpha段階ではありますが、多数の新機能と改善が含まれた意欲的なアップデートです。OrcaSlicer公式サイトでは、BambuLab、Prusa、Voron、VzBot、RatRig、Crealityなど幅広いプリンターに対応するG-codeジェネレーターとして紹介されています。
テンプレートベースのスパースインフィルローテーション
v2.3.1の目玉機能の一つが、テンプレートベースのスパースインフィルローテーションシステムです。従来のインフィルパターンは固定的でしたが、新しいシステムでは層ごとにインフィルの回転角度をテンプレートで制御できます。
これにより、インフィルパターンが各層で同じ位置に重ならず、より均一な内部構造を実現できます。結果として、造形物の強度と表面品質の両方が向上します。
ファジースキン機能の強化
ファジースキン(Fuzzy Skin)は、造形物の外壁に意図的にランダムなテクスチャを追加する機能です。v2.3.1では、このファジースキン機能が大幅に強化されました。テクスチャの密度や深さをより精密に制御できるようになり、有機的な質感やグリップ性の向上した表面仕上げを容易に実現できます。
フィギュアや装飾品、グリップ部品など、表面のテクスチャが重要な用途で特に威力を発揮します。
フローレートキャリブレーションの改善
正確なフローレート(押出量)設定は、美しい表面品質と寸法精度の基本です。v2.3.1では、フローレートキャリブレーション機能が改善され、より直感的な操作で最適なフローレートを特定できるようになりました。
Input ShapingとJunction Deviationキャリブレーション
v2.3.1で最も注目すべき新機能の一つが、包括的なInput ShapingおよびJunction Deviationキャリブレーションツールの内蔵です。
“OrcaSlicer now introduces comprehensive input shaping and junction deviation calibration tools to optimize motion control on Marlin 2 and Klipper-based printers through a two-step calibration process.”
このツールは、Marlin 2とKlipperベースのプリンターのモーション制御を最適化するための2段階キャリブレーションプロセスを提供します。
Input Shapingとは
Input Shaping(入力整形)は、プリントヘッドの急激な動きによって発生する振動(リンギング/ゴースティング)を軽減する技術です。Klipperでは以前から対応していましたが、OrcaSlicerに内蔵されたキャリブレーションツールにより、設定プロセスが大幅に簡素化されました。
Junction Deviationとは
Junction Deviation(接合部偏差)は、プリントパスの方向転換時の速度制御に関するパラメータです。適切に設定することで、角部の品質が向上し、印刷速度を維持しながら精度を確保できます。
Klipperとの連携
OrcaSlicerは、MarlinのM593 G-codeとKlipperの両方に対応したInput Shaping設定をサポートしています。Klipperユーザーは、OrcaSlicer上でキャリブレーションを実行し、最適なパラメータをKlipperの設定ファイルに反映させることができます。
Klipperファームウェアの最新動向
Klipper公式GitHubでは、継続的な改善が行われています。Klipperは、Raspberry Piなどのシングルボードコンピューターと3Dプリンターのメインボードを組み合わせて使用するファームウェアで、高い拡張性とカスタマイズ性が特徴です。
“Klipper is a 3d-printer firmware. It combines the power of a general purpose computer with one or more micro-controllers.”
2026年のKlipperは、以下の領域で進化を続けています。
マルチMCUサポートの拡充:複数のマイクロコントローラーを同時に制御する能力が向上し、より複雑なプリンター構成に対応可能になっています。
CANBUS対応の安定化:CANBUS通信による省配線化がさらに安定し、ToolheadとメインボードをCAN通信で接続する構成が主流になりつつあります。
Pressure Advanceの改善:フィラメントの圧力遅延を補正するPressure Advance機能の精度が向上し、高速印刷時の品質が改善されています。
実践手順:OrcaSlicer v2.3.1でのInput Shapingキャリブレーション
ステップ1:OrcaSlicer v2.3.1のインストール
OrcaSlicer公式GitHubから最新版をダウンロードし、インストールします。Windows、macOS、Linuxに対応しています。
ステップ2:プリンタープロファイルの設定
使用するプリンターのプロファイルを選択または作成します。Klipperベースのプリンターの場合、ネットワーク接続の設定も行います。
ステップ3:キャリブレーションテストの実行
「Calibration」メニューから「Input Shaping」を選択します。キャリブレーションテストモデルが自動生成されるので、これを印刷します。
ステップ4:結果の分析と設定反映
印刷されたテストモデルを観察し、リンギングが最も少ない周波数を特定します。この値をKlipperのprinter.cfgに[input_shaper]セクションとして設定します。
[input_shaper]
shaper_freq_x: 48.2
shaper_freq_y: 36.8
shaper_type: mzv
ステップ5:Junction Deviationの調整
同様にJunction Deviationのキャリブレーションを実行し、最適値を設定に反映させます。
よくある質問(FAQ)
Q: OrcaSlicerは無料ですか?
A: はい、OrcaSlicerはオープンソースで完全に無料です。GitHubから最新版をダウンロードできます。
Q: KlipperとMarlinの違いは何ですか?
A: Klipperはホストコンピューター(Raspberry Pi等)でG-codeの処理を行い、MCUは低レベルのモーター制御に専念します。Marlinはすべてをプリンターのメインボード上で処理します。Klipperの方が計算能力に優れ、高速印刷時の品質が向上する傾向があります。
Q: OrcaSlicerのInput ShapingキャリブレーションはADXL345加速度センサーが必要ですか?
A: OrcaSlicer内蔵のキャリブレーションは、テストプリントの目視評価で行えるため、加速度センサーは必須ではありません。ただし、ADXL345を使ったKlipperネイティブのキャリブレーションの方がより正確な結果が得られます。
Q: ファジースキンはすべてのフィラメントで使えますか?
A: PLAやPETGなど一般的なフィラメントで問題なく使用できます。TPUなどの軟質フィラメントでは効果が異なる場合があるため、テスト印刷で確認することをおすすめします。
まとめ
OrcaSlicer v2.3.1は、インフィルローテーション、ファジースキン、フローレートキャリブレーション、そしてInput Shaping/Junction Deviationキャリブレーションツールの内蔵と、非常に充実したアップデートになりました。特にInput Shapingのキャリブレーションがスライサーに内蔵されたことは、Klipperユーザーにとって大きな利便性の向上です。
Klipperファームウェアの継続的な進化と相まって、2026年の3Dプリンティングはより高速で高品質な造形が誰にでも手の届くものになっています。ぜひOrcaSlicer v2.3.1を試して、プリント品質の向上を実感してみてください。

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