【2026年2月版】ROS 2 Kilted Kaijuの全貌:Zenohミドルウェアとロボティクス開発の新標準
ROS 2(Robot Operating System 2)の最新リリースであるKilted Kaijuが、ロボティクス開発の現場に大きな変革をもたらしています。Zenohミドルウェアの1.0リリース、Windows環境でのPixi対応、NV12画像フォーマットのサポートなど、2026年のロボット開発者が押さえるべきポイントが満載です。本記事では、ROS 2 Kilted Kaijuの新機能と実践的な活用方法を詳しく解説します。
ROS 2 Kilted Kaijuの概要
Open Roboticsは2025年5月23日にROS 2の第11番目のリリースとなるKilted Kaijuを正式に発表しました。前バージョンのJazzy JaliscoがLTS(長期サポート)リリースだったのに対し、Kilted Kaijuはスタンダードリリースで、2026年11月までの約1年半のサポート期間となっています。
ROSCon JPも次のようにコメントしています。
「ついにROS 2 Kilted Kaijuがリリースされました。2026年11月まで、約1年半の短いサポートですがたくさんの機能追加・改善が含まれています!」
Zenohミドルウェア 1.0の革新
Kilted Kaijuの最も注目すべき特徴の一つが、Zenohミドルウェアの1.0リリースとの同時提供です。
Zenohは、従来のDDS(Data Distribution Service)に代わる新しい通信ミドルウェアとして注目を集めています。DDSが重厚なプロトコルスタックを必要とするのに対し、Zenohは軽量で高性能なデータ配信を実現します。
Kilted KaijuではZenohバイナリが直接ダウンロード・使用可能な状態で提供されており、DDS環境からZenohへの移行が大幅に簡素化されました。特にリソース制約のあるエッジデバイスやIoT環境でのROS 2デプロイメントにおいて、Zenohの軽量さは大きな利点となります。
Windows環境でのPixi/Conda対応
“Kilted Kaiju now uses Pixi (prefix.dev) and Conda as the default Windows installation mechanism for better dependency management on Windows systems.”
ROS 2公式ドキュメントによると、Kilted KaijuではWindows環境でのデフォルトインストールメカニズムとしてPixi(prefix.dev)とCondaが採用されました。
これは、ROS 2のWindows開発者にとって待望のアップデートです。従来のWindows環境でのROS 2セットアップは複雑で、依存関係の管理が困難でした。Pixiの採用により、パッケージの依存関係が自動的に解決され、環境構築の手間が大幅に削減されています。
NV12画像フォーマットのサポート
Kilted Kaijuでは、共通インターフェースでNV12フォーマットがサポートされるようになりました。NV12はYCbCrアプローチを使用した効率的な画像エンコード方式で、カメラやグラフィックスカードなどのハードウェアデバイスで一般的に使用されています。
このサポートにより、カメラからの画像データを変換なしに直接ROS 2のトピックとして配信でき、画像処理とトランスポートの速度が向上する可能性があります。特にリアルタイム画像処理を必要とするロボットビジョンアプリケーションで恩恵が大きいです。
その他の重要な新機能
rclpyの静的型ヒント
ROS 2のPython APIであるrclpyに、ActionClientとActionServerの静的型ヒントが追加されました。これにより、IDEでの自動補完やタイプチェッカーとの連携が改善され、コードの品質と保守性が向上しています。
ROSBag2の機能強化
ROSBag2のレコーダーとプレイヤーがrclcppコンポーネントに対応し、IPC(プロセス間通信)やスレッド優先度制御などの拡張機能が利用可能になりました。サービスコールの記録と再生機能はJazzyで導入されましたが、Kilted Kaijuではさらに強化されています。
RViz2のシミュレーション時間リセット
RViz2内からシミュレーション時間を直接リセットできるようになりました。これにより、シミュレーション環境でのデバッグ効率が向上しています。
nav_msgsの新メッセージ
nav_msgsパッケージにPoseStampedArrayメッセージが追加され、複数のポーズ情報を効率的にやり取りできるようになりました。経路計画やマルチロボット制御のシナリオで有用です。
Jazzy Jalisco(LTS)との関係
ROS 2 Jazzy Jaliscoは2024年5月にリリースされたLTSバージョンで、2029年5月までのサポートが保証されています。本番環境での安定運用を重視する場合はJazzyが推奨され、最新機能を活用した開発にはKilted Kaijuが適しています。
Jazzy Jaliscoでは、Gazebo Harmonicとの統合推奨、サービスコールのROSBag記録対応、Ubuntu 24.04 Noble Numbatのサポートなどが特徴です。
実践手順:Kilted KaijuでZenohを試す
ROS 2 Kilted KaijuでZenohミドルウェアを使用する手順を解説します。
ステップ1:ROS 2 Kilted Kaijuのインストールとして、Ubuntu 24.04環境でaptリポジトリを設定し、ros-kilted-desktopパッケージをインストールします。Windowsの場合はPixi経由でのインストールが推奨されます。
ステップ2:Zenohミドルウェアの設定として、RMW実装としてZenohを選択するために、環境変数RMW_IMPLEMENTATIONにrmw_zenohを設定します。
ステップ3:動作確認として、ターミナルを2つ開き、一方でros2 run demo_nodes_cpp talkerを実行し、もう一方でros2 run demo_nodes_cpp listenerを実行して、Zenoh経由でのメッセージ通信を確認します。
ステップ4:パフォーマンス比較として、DDSとZenohでのレイテンシやスループットを比較し、ユースケースに適したミドルウェアを選定します。ros2 topic hzコマンドでメッセージ周波数を確認できます。
ステップ5:実機への展開として、エッジデバイスやロボットにZenoh設定のKilted Kaijuをデプロイし、実際の運用環境でのパフォーマンスを検証します。
よくある質問(FAQ)
Q: Kilted KaijuとJazzyのどちらを使うべきですか?
本番環境での長期安定運用にはJazzy Jalisco(LTSサポート:2029年5月まで)が推奨されます。最新のZenoh対応やPixiインストール、NV12サポートなどの新機能が必要な開発プロジェクトにはKilted Kaijuが適しています。
Q: ZenohはDDSの完全な置き換えですか?
現時点では共存可能な選択肢として提供されています。Zenohは軽量さとパフォーマンスで優位ですが、DDSは業界標準として広い互換性を持っています。プロジェクトの要件に応じて選択してください。
Q: ROS 2は日本語の学習リソースはありますか?
ROSCon JPコミュニティ、ROS Japan Users Groupが活発に活動しています。また、公式ドキュメントの日本語翻訳プロジェクトも進行中です。
Q: 次のROS 2リリースはいつですか?
ROS 2は毎年5月に新バージョンをリリースしています。次のリリースは2026年5月頃に予定されています。
まとめ
ROS 2 Kilted Kaijuは、Zenohミドルウェアの1.0リリース、Windowsでの環境構築の簡素化、NV12画像フォーマットのサポートなど、ロボティクス開発を加速する多数の改善を含む重要なリリースです。
特にZenohの登場は、ROS 2の通信インフラに新たな選択肢をもたらし、エッジデバイスやIoT環境でのロボットアプリケーション開発を大きく前進させるでしょう。NVIDIAのPhysical AIモデル群との連携も含め、2026年のロボティクスエコシステムはかつてないほど充実しています。
参考資料
- ROS 2 Kilted Kaiju Released – Open Robotics
- Kilted Kaiju Release Details – The Robot Report
- Kilted Kaiju Documentation – ROS 2 Documentation
- Get DDS-Ready with ROS 2 Kilted Kaiju and Connext 7.3 LTS – RTI Blog
- Jazzy Jalisco Release – ROS 2 Documentation

コメント