愛知県我郡市700坪の土地、5つの空き家…この相続物件どうすべき?

愛知県我郡市700坪の土地、5つの空き家…この相続物件どうすべき?

動画URL: https://www.youtube.com/watch?v=aQtmpPPLec0
チャンネル: 不動産Gメン滝島
再生回数: 424,962回


投資案件概要

項目 内容
物件種別 土地+建物5棟(蔵、長屋等)
所在地 愛知県我郡市
土地面積 700平米(約212坪)
築年数 最古:1840年(築180年超)、他に明治28年、昭和34年等
土地評価額 約4,200万円(坪20万円×212坪)
取得方法 相続
現状 空き家状態、固定資産税年16万円
特記事項 戦国時代の刀・槍等が出土、博物館へ寄託

投資の具体的内容(不動産プロ観点)

動画内で不動産Gメン滝島氏が提示した2つのシナリオを詳しく分析します。

シナリオ1: 建て直して賃貸経営

投資額内訳

項目 金額
解体費用 500万円
建築費用(210坪×@100万円) 2億1,000万円
その他予備費 500万円
合計投資額 2億2,000万円

収支シミュレーション

項目 月額 年額
収入
賃料収入(210坪×@4,000円) 84万円 1,008万円
支出
ローン返済(金利2%、35年) 70万円 840万円
固定資産税・管理費 約4万円 約50万円
支出合計 74万円 890万円
年間キャッシュフロー +10万円 +118万円
表面利回り 4.58%

主なリスク

  • 空室リスク: 地方都市で賃貸需要が限定的
  • 家賃下落リスク: 新築時坪5,000円→数年後3,000円に下落の可能性
  • 修繕費用: 長期的なメンテナンスコスト増大
  • 投資回収期間: 単純計算で約186年(実質的に回収不可能)

シナリオ2: 売却して現金化

売却想定価格

項目 金額
土地評価額 4,200万円
解体費用(買主負担考慮) △500万円
実質売却価格 3,500〜3,700万円

メリット

  • 即座に現金化可能
  • 固定資産税年16万円の負担から解放
  • 管理責任からの解放
  • 将来的なリスクゼロ

投資シミュレーション

グラフから明らかなように、建て直し案は初期投資2億2,000万円に対し、20年経っても元本回収できません。一方、売却案は即座に3,700万円の現金を手にできます。


投資案件の評価・分析

評価項目 建て直し案評価 売却案評価 分析内容
収益性 ⭐⭐ ⭐⭐⭐ 建て直し:表面利回り4.58%だが実質利回りはほぼゼロ
売却:即座に3,700万円の現金化可能
立地条件 ⭐⭐ ⭐⭐ 愛知県我郡市は賃貸需要が限定的
駅からの距離・商業施設へのアクセスに難あり
リスク ⭐⭐⭐⭐ 建て直し:空室・家賃下落・修繕費等の多重リスク
売却:リスクゼロ
流動性 ⭐⭐⭐⭐⭐ 建て直し:地方物件は再売却困難
売却:即座に現金化
総合評価 ⭐⭐ ⭐⭐⭐⭐ 建て直しは経済合理性なし
売却が最適解

評価レーダーチャート

レーダーチャートを見ても、売却案が全ての面で建て直し案を上回っています。唯一、思い出・歴史的価値を重視する場合のみ、保存を検討する余地があります。


失敗案件の見分けポイント

不動産投資コンサルタント観点で、本件が「建て直しNG案件」である理由を整理します。

見分けポイント 本案件の状況 判定 詳細分析
利回りが現実的か 表面利回り4.58% ⚠️ 地方物件で5%未満は投資不適格
家賃相場は適正か 坪@4,000円(新築@5,000円) ⚠️ 新築プレミアム剥がれで坪@3,000円まで下落リスク
立地の需要 愛知県我郡市(地方都市) 人口減少エリア、賃貸需要弱い
投資回収期間 約186年 現実的に回収不可能
空室リスク 高い 立地的に空室率50%超の可能性
出口戦略 地方物件の再売却困難 売るに売れない負動産化リスク
ローン返済比率 月収84万円中70万円 83%が返済、余剰ほぼゼロ
メンテナンスコスト 見込み不足 築年数経過で修繕費激増

リスク評価チャート

リスク評価チャートが示す通り、建て直し案は全てのリスク項目で高評価(危険)となっています。

不動産投資で失敗する典型パターン

本件は以下の「失敗案件あるある」に完全に該当します:

  1. 建築会社が儲かるだけ
    → 2億1,000万円の建築費のうち、数千万円が建築会社の利益

  2. 投資回収不可能
    → 年間CF +118万円では186年かかる(ローン完済後も150年超)

  3. 家賃下落リスク無視
    → 新築プレミアムが剥がれた後の家賃下落を考慮していない

  4. 空室リスク軽視
    → 地方物件の空室率は30〜50%が現実的

  5. 出口戦略なし
    → 地方の築古賃貸は売却ほぼ不可能


特殊な活用法の検討(非推奨)

動画内で滝島氏が言及した「民泊・撮影所」活用についても検討します。

民泊活用案

メリット:
– 明治・大正・昭和建築の歴史的価値
– 中庭・蔵など独特の雰囲気
– 外国人観光客への訴求力

デメリット:
– 周辺に観光資源なし
– 管理者が東京在住(遠隔管理困難)
– 初期投資(水回り改修等)必要
– 民泊新法の厳しい規制

結論: 観光資源が乏しい立地では成立困難

撮影所活用案

メリット:
– レトロな雰囲気は撮影需要あり
– コスプレ・時代劇等のロケ地

デメリット:
– 年間撮影回数は数回程度(収益限定的)
– 撮影のための設備投資必要
– 常時管理体制が必要

結論: 趣味の範囲ならともかく、事業としては成立困難


まとめ

投資判断の結論

売却一択です。

推奨アクション

  1. 即座に売却活動開始
    • 地元の複数の不動産会社に査定依頼
    • 解体費用を売主負担とする「現況渡し」も検討
    • 目標価格: 3,500〜3,700万円
  2. 思い出の品は事前に整理
    • 博物館に寄託済みの刀・槍等は別管理
    • 写真・記録として思い出を保存
    • 家系図等の重要書類は保管
  3. 税務対策
    • 相続税評価額の確認
    • 売却時の譲渡所得税を試算
    • 税理士に相談し最適なタイミングで売却

注意点

  • 「建て直しませんか?」営業には乗らない
    建築会社・ハウスメーカーは必ず建て直しを勧めますが、儲かるのは彼らだけです。

  • 思い出と経済合理性は分けて考える
    動画内でも滝島氏が強調していますが、「思い出があるから手放せない」と「投資として成立するか」は別問題です。

  • 相続放棄の期限に注意
    本件は既に相続済みですが、同様のケースで悩んでいる方は相続放棄の3ヶ月期限に注意してください。


不動産投資コンサルタントからのアドバイス

本件のような「相続した地方の土地」は、現代の不動産投資において最も難しい案件の1つです。

こんな人は建て直しを検討してもOK

  • 生まれ育った家で、絶対に手放したくない
  • 経済合理性より感情を優先できる資産背景
  • 年間数百万円の赤字を許容できる資金力

大多数の人には売却を推奨

  • 投資として成立しない(利回り実質ゼロ)
  • 空室・修繕等のリスクが高すぎる
  • 売るに売れない「負動産」化のリスク

結論: 感情を排除して数字だけで判断すれば、売却が最適解です。


視聴者へのメッセージ

動画内で滝島氏が最後に述べていた通り、「この動画を見てアイデアがある方はぜひ」とのことです。

もし本物件に興味がある、または同様の案件でお悩みの方は、以下を参考にしてください:

  • 民泊プロ: 立地を見極め、観光資源とセットで活用できるか検討
  • 建築家・デザイナー: 歴史的建築物の保存活用(補助金活用)
  • 地域おこし団体: 文化財登録して保存、地域資源として活用

ただし、いずれも「投資」としてではなく「社会貢献・文化保存」の観点で取り組むべきです。


執筆者所感:
本件は不動産投資の教科書的な「やってはいけない案件」です。しかし、180年前の蔵や戦国時代の刀が出てくるような歴史的価値は計り知れません。経済合理性と文化的価値のジレンマを感じる案件でした。

Tags: #不動産投資 #相続物件 #地方不動産 #空き家問題 #投資失敗事例

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