【2026年2月版】GDPR改革とEU AI Act完全施行|Digital Omnibus規則・透明性義務・グローバルプライバシー法最前線
はじめに
2026年、データプライバシーとAI規制の世界が大きな転換点を迎えています。欧州委員会が発表したDigital Omnibus規制提案によりGDPRの初の大規模改革が動き出し、EU AI Actの高リスクAI処理に関する義務の適用時期が延期されるなど、規制環境が急速に変化しています。さらに、米国では20州で新しいプライバシー法が施行され、グローバルなコンプライアンスの複雑性が増しています。
この記事では、2026年2月時点の最新規制動向を、GDPR改革、EU AI Act、グローバルなプライバシー法の観点から詳しく解説します。
欧州委員会のDigital Omnibus規制提案
GDPR初の大規模改革
IAPP(International Association of Privacy Professionals)が報じたように、2025年11月19日、欧州委員会は2つの重要な規制提案を発表しました。「Digital Omnibus Regulation Proposal」と「Digital Omnibus on AI Regulation Proposal」です。
これはGDPRの施行以来、初の本格的な改革イニシアチブとなります。
主な変更点
1. AIのための正当利益の明確化
McGrath委員の発言が注目を集めています。
“Organizations may rely on legitimate interests to process personal data for AI purposes, while maintaining all existing GDPR safeguards.”
(組織はAI目的で個人データを処理するために正当利益に依拠することができ、同時に既存のGDPRセーフガードはすべて維持される。)
これにより、AI開発におけるデータ処理の法的根拠が明確化されます。
2. Cookie同意の簡素化
ユーザーはワンクリックでCookieを承認または拒否できるようになり、組織はユーザーの選択を6ヶ月間尊重する義務を負います。長年にわたるCookieバナーの煩わしさが軽減される見込みです。
3. データ侵害報告の一元化
GDPR、NIS2、DORAの各規制で現在別々に求められているインシデント通知を、一元化されたポータルに統合する提案が含まれています。
4. 処理活動記録の適用範囲拡大
処理活動記録(ROPA)の免除対象が、従業員250人未満の組織から750人未満の組織に拡大されます。
賛否両論の反応
Crowell & Moringによると、この提案に対しては賛否両論の反応が出ています。
プライバシー活動家のMax Schrems(NOYB)は強く批判しています。
“The biggest attack on Europeans’ digital rights in years… it creates loopholes for tech companies.”
(ここ数年で欧州市民のデジタル権利に対する最大の攻撃だ…テック企業のための抜け穴を作っている。)
一方、業界団体はさらに大胆な簡素化措置を求めています。
EU AI Actの最新状況
高リスクAI義務の適用延期
Pearl Cohenが分析しているように、EU AI Actのコアフレームワークは2026年に完全運用される予定でした。しかし、基準や支援ツールの確立が遅れたため、高リスクAI処理の適用期限が2026年8月から2027年12月に延期されています。
中小企業向けの緩和措置
Digital Omnibus on AI Regulation Proposalでは、中小企業(SME)向けに以下の緩和措置が提案されています。
- 技術文書の要件削減
- 実環境テスト用のサンドボックスの提供
- AI Officeの監督権限強化
AI規制のグローバル動向
Parloaが解説するように、AIプライバシー規制はEUだけでなく、米国法やその他の国々でも急速に発展しています。GDPR、EU AI Act、米国法の相互関係を理解することが、グローバルなコンプライアンスにおいて不可欠になっています。
2026年のエンフォースメント重点領域
透明性義務への集中
TechGDPRが報じているように、2025年に「消去権(Right to Erasure)」が各データ保護当局の協調行動の対象となった後、EDPBは2026年の焦点としてGDPR第12条〜第14条に規定された透明性と情報提供義務のコンプライアンスを発表しました。
Shadow AIの懸念
組織内で公認されていないAIツール(いわゆる「Shadow AI」)の使用が新たなコンプライアンスリスクとして浮上しています。従業員が業務効率化のために無断で使用するChatGPTなどのAIツールにより、個人データが意図せず外部に送信されるケースが増加しています。
グローバルなプライバシー法の動向
米国:20州の新プライバシー法
Secure Privacyが解説しているように、2026年は米国で20州の新しいプライバシー法が施行される「コンプライアンス収束」の年です。組織は同意メカニズム、ベンダー監督、自動化された意思決定に焦点を当てた協調的なエンフォースメントに対応する必要があります。
英国:データ法の動向
Osborne Clarkeは、2026年1月の英国規制見通しとして、EU離脱後のデータ保護規制の独自の発展について分析しています。
アジア太平洋地域
インド、オーストラリア、コロンビア、ブラジルなど、多くの国で新しいプライバシー規制が施行・強化されています。
実践チェックリスト:2026年コンプライアンス対応
Step 1: 現状評価
組織のデータ処理活動を棚卸しし、GDPR、AI Act、各国法への準拠状況を確認します。
Step 2: AI利用の監査
組織内で使用されているAIツール(承認済み・未承認を含む)を洗い出し、データフローを把握します。
Step 3: Cookie同意メカニズムの更新
Digital Omnibus提案の成立に備え、ワンクリック同意/拒否に対応したCookie管理システムへの移行を検討します。
Step 4: 透明性文書の整備
プライバシーポリシーと情報提供通知を更新し、GDPR第12条〜第14条の要件を満たしているか確認します。
Step 5: ベンダー管理の強化
サードパーティベンダーとのデータ処理契約を見直し、AI Act対応を含むコンプライアンス要件を更新します。
よくある質問(FAQ)
Q: Digital Omnibus提案はいつ発効しますか?
A: 提案段階であり、EU議会と理事会での審議が必要です。成立には1〜2年かかる見込みです。
Q: AI Actの高リスク義務は本当に2027年に延期されましたか?
A: 提案では2027年12月への延期が含まれていますが、欧州委員会が基準の準備状況を確認した後に正式決定されます。
Q: 日本企業への影響は?
A: EU居住者のデータを処理する日本企業はGDPR対象です。AI Actについても、EUで利用されるAIシステムを提供する場合は適用されます。
Q: Shadow AIにどう対処すべきですか?
A: 組織全体のAI利用ポリシーを策定し、承認済みツールのリストを明確にし、従業員教育を実施してください。
まとめ
2026年のプライバシー・AI規制環境は、欧州委員会のDigital Omnibus提案によるGDPRの初の大規模改革、EU AI Actの高リスク義務の適用延期、そして米国20州の新プライバシー法の施行という3つの大きな変化に直面しています。
透明性義務が2026年のエンフォースメント重点領域に指定され、Shadow AIが新たなリスクとして浮上する中、組織はプロアクティブなコンプライアンス対応を迫られています。Cookie同意の簡素化やデータ侵害報告の一元化といった改善が提案される一方で、プライバシー活動家からは「テック企業への抜け穴」との批判も出ており、今後の審議が注目されます。
参考資料
- European Commission proposes significant reforms to GDPR, AI Act – IAPP
- New Privacy, Data Protection and AI Laws in 2026 – Pearl Cohen
- Privacy Laws 2026: Global Updates & Compliance Guide – Secure Privacy
- EU AI Act, GDPR, and Digital Laws Changes Proposed – Crowell & Moring
- AI Privacy Rules: GDPR, EU AI Act, and U.S. Law – Parloa
- Data Protection Digest January 2026 – TechGDPR
- Data law UK Regulatory Outlook January 2026 – Osborne Clarke
- Complete GDPR Compliance Guide 2026 – Secure Privacy

コメント