【2026年2月版】ROS 2 Kilted Kaiju徹底解説・Zenohミドルウェア対応・ロボティクス開発最新ガイド
はじめに、ロボティクス開発の標準プラットフォームであるROS 2(Robot Operating System 2)は、2026年に入りKilted Kaijiリリースを中心に大きな進化を遂げています。特にEclipse Zenohが初のTier 1ミドルウェアとしてサポートされたことは、ロボティクスの通信基盤に革命をもたらす可能性があります。また、Navigation 2(Nav2)のKilted対応や、macOS Apple Siliconでのネイティブ動作デモなど、エコシステムの拡大も目覚ましい状況です。本記事では、ROS 2の最新動向を包括的に解説します。
ROS 2 Kilted Kaiju:11番目のROS 2リリース
Open Roboticsが発表したKilted Kaijiは、ROS 2の11番目のリリースで、2026年11月までのサポートが予定されている標準リリースです。前リリースのJazzy Jalisco(2029年までサポートのLTS)と比較して、最新の実験的機能が多数含まれています。
Eclipse Zenoh — Tier 1ミドルウェアとしての登場
Kilted Kaijiの最大の革新は、Eclipse ZenohがROS 2初のTier 1ミドルウェアとしてサポートされたことです。
“ROS Kilted Kaiju is the first ROS release to support Eclipse Zenoh as a Tier 1 middleware, which means it supports all of the listed Tier 1 operating systems and is verified with a full battery of daily tests.” — Kilted Kaijiは、Eclipse ZenohをTier 1ミドルウェアとしてサポートする初めてのROSリリースです。
従来のDDS(Data Distribution Service)ベースのミドルウェアと比較して、Zenohは低レイテンシ、低帯域幅環境での優れたパフォーマンス、そしてWAN(広域ネットワーク)環境でのシームレスな通信を実現します。これにより、クラウドロボティクスやマルチロボットシステムの構築が格段に容易になります。
Python開発の強化
The Robot Reportによると、Pythonクライアントライブラリ(rclpy)に二つの大きな改善が加わりました。拡張されたPython型チェックサポートにより、Pythonアクションとジェネリクスの型安全性が向上しています。これにより、開発時のエラー検出が容易になり、大規模なロボティクスプロジェクトでの生産性が向上します。
NV12画像フォーマットのサポート
Kilted Kaijiでは、共通インターフェースでNV12フォーマットがサポートされるようになりました。NV12は、カメラやグラフィックカードなどのハードウェアデバイスで広く使われる効率的な画像エンコーディング形式で、YUV420のセミプレーナー変種です。これにより、カメラデバイスからの画像データを変換なしで直接処理できるようになり、特にリアルタイム画像処理のパフォーマンスが向上します。
ROSBag2の強化
ROSBag2 recorder and player now support rclcpp components and offer enhanced features like IPC and thread priority control for better performance.
ROSBag2のレコーダーとプレーヤーがrclcppコンポーネントをサポートし、IPC(プロセス間通信)やスレッド優先度制御などの機能強化が行われました。大量のセンサーデータを記録するロボットシステムにおいて、パフォーマンスと信頼性の両方が向上しています。
Jazzy Jalisco — LTSリリースの安定性
Intrinsicによると、Jazzy Jaliscoは2029年までサポートされるLTS(Long Term Support)リリースとして、産業用ロボティクスの基盤となっています。
RViz2の機能パリティ達成
Jazzyリリースでの重要な成果の一つが、RViz2がRViz1との機能パリティを達成したことです。ROS 1からROS 2への移行における大きな障壁の一つであったRViz2の機能不足が解消され、移行を検討している組織にとって大きな後押しとなっています。
Type Description Service
Iron Irwiniで導入が始まったget_type_descriptionサービスがJazzyで完成しました。外部ユーザーがノードに対してサポートするメッセージタイプを問い合わせできるこの機能は、動的なシステム構成やデバッグにおいて非常に有用です。
Navigation 2(Nav2)のKilted対応
Open Robotics Discourseによると、ROS 2の主要ナビゲーションスタックであるNav2もKilted対応リリースが行われました。Nav2は、自律移動ロボットの経路計画、障害物回避、ローカリゼーションなどの機能を包括的に提供するパッケージです。
Kilted対応版では、新しいPoseStampedArrayメッセージがnav_msgsパッケージに追加され、複数のウェイポイントを効率的に扱えるようになっています。
macOS Apple Siliconでのネイティブ動作
Open Robotics Discourseでは、ROS 2 KiltedがmacOS Apple Silicon上でネイティブに動作するデモが初めて公開されました。Windowsインストールの簡素化(Pixi/Condaによる依存関係管理)と併せて、ROS 2の開発環境の多様化が進んでいます。
Clearpath Roboticsのプラットフォームアップグレード
Clearpath Roboticsは、2026年1月に自社ロボットプラットフォームのROS 2サポートに関する包括的なガイドを公開しました。これにより、Husky、Jackal、Dingo、Warthogなどの人気ロボットプラットフォームがROS 2で利用できるようになっています。
実践手順:ROS 2 Kilted開発環境の構築
ステップ1:OSの選択とインストール
Ubuntu 24.04 LTSが推奨環境です。ROS 2公式ドキュメントに従って、aptリポジトリを追加し、ros-kilted-desktopパッケージをインストールします。
ステップ2:ワークスペースの作成
colconビルドシステムを使って、カスタムワークスペースを作成します。src、build、install、logの各ディレクトリが自動生成されます。
ステップ3:Zenohミドルウェアの設定
Zenohを試す場合は、rmw_zenohパッケージをインストールし、RMW_IMPLEMENTATION環境変数を設定します。DDSとZenohを切り替えながら、パフォーマンスの違いを確認してみましょう。
ステップ4:Nav2のセットアップ
nav2_bringupパッケージを使って、シミュレーション環境(Gazebo)でNav2を起動します。TurtleBot3のシミュレーションモデルを使えば、自律ナビゲーションの基本を手軽に学べます。
ステップ5:実機への展開
シミュレーションで動作確認ができたら、実機のロボットに展開します。Clearpath RoboticsのプラットフォームやカスタムロボットのURDFモデルを用意し、実環境でのテストを行います。
よくある質問(FAQ)
Q1: ROS 2のKiltedとJazzyのどちらを選ぶべきですか?
A1: 産業用途や長期プロジェクトには2029年までサポートされるJazzy(LTS)を推奨します。最新機能を試したい研究・教育用途にはKiltedが適しています。
Q2: Zenohミドルウェアのメリットは何ですか?
A2: DDSと比較して、NAT越えが容易、低帯域幅環境でのパフォーマンスが優れている、クラウド接続が簡単、といったメリットがあります。特にマルチロボットシステムやリモート操作に適しています。
Q3: ROS 1からROS 2への移行はいつすべきですか?
A3: ROS 1(Noetic)のサポートは2025年5月に終了しています。RViz2の機能パリティ達成により、移行の大きな障壁が解消されたため、できるだけ早い移行を推奨します。
Q4: ROS 2の学習リソースはありますか?
A4: ROS 2公式チュートリアルが最も包括的です。また、UdemyのROS 2 for Beginners(Jazzy/2026年版)コースも人気があります。
まとめ
ROS 2は2026年、Kilted Kaijiリリースでの Zenoh Tier 1サポート、Python開発の強化、NV12サポート、ROSBag2の改善など、多くの革新を達成しました。一方、Jazzy JaliscoのLTSリリースは産業用途の安定基盤として確固たる地位を築いています。
macOS Apple SiliconでのネイティブサポートやWindows環境の改善により、ROS 2の開発者コミュニティはかつてないほど多様化しています。ロボティクス開発に興味のある方は、今がROS 2を始める絶好のタイミングです。

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